『言葉は思いを偽るために人に与えられた』¹ 私の英詩の講義を受講した一人の女子学生が、ある恋愛詩についてのレポートの最後に、「これほど言葉が心を表現するとは信じられないようなことだ。言葉は心を偽るためのものだと考えていた」と記しているのを読み、少なからず衝撃を受けた。 われわれは日々数限りない言葉を操って生活しているが、確かに、他者との対話においては独り言の場合とは異なり、「表向き」の言葉を吐くことが多い。まさに、十八世紀フランスの政治家タレーランが言ったとされる標記の言葉通りである。彼はモリエールの言葉、「言葉は思うところを表現するために人間に与えられた。言葉は心の代弁者であり、魂の姿である」をもじってこのように言ったとされているが、現実に、成人もしない若者から直接きかされることはやはりショックである。 |