『駝鳥(だちょう)の策略』¹

 駝鳥は現在アフリカの乾燥地帯にしかいないが、以前はシリア、アラビア、モンゴルにも棲息していた。そのため旧約聖書や『ユリシーズ』などの古典文学に幾度も現れても不思議はない。したがって、この鳥には様々な象徴的な意味、例えば「忘れっぽさ」、「正義」、「残酷さ」、「暴飲暴食」、「無節操」、「異教」、「偽善」、「神に頼る人」、「速さ」など驚くほど多くの意味を担わされてきた。

上記の象徴的意味のほかに「理解力の欠如」がある。駝鳥は猟師に追われて、もはや逃れる術がないと思うと、砂の中に頭だけを隠してしまう。それで自分の姿も見えなくなったと思い込み、また自分の目には危険が見えなければ安全であると思うのである。このようなことから、このことわざは文字通り『頭隠して尻隠さず』的な知恵の無さ、愚鈍さ、さらに非常に臆病であることをも表す。

 このような行動をとるのは駝鳥だけではない。西洋ヤマシギもそうであるし、日本の国鳥であるキジもそうである〈なにやら象徴的であるが、ここでは深追いする紙幅はない〉。キジも不意を襲われたりすると藪の中に首だけを突っ込み、尻尾を出したまま隠れたつもりでいるが、ここからの連想で上掲の『頭隠して尻隠さず』ということわざが生まれたことを付け加えておく。

1.  Ostrich’s policy.
  La politique d’autoruche.

(志子田光雄)