『嫉みは貪欲にまさる』¹ 嫉(ねた)みは、相手が自分より優れていることを知ったとき、自分の能力の劣っていることは顧みずに、その人の成功や業績、幸福を羨む生得の感情である。しかし、本来能力のある人,あるいは自己の能力をわきまえている人には、このような感情は生まれにくい。 嫉みは、個人対個人の間のものである限りはさほど問題でないが、この本来的には個人的感情が社会的な場で様々な策略の形で表面化するとき、社会全体の利益に与える損失は計り知れない。古来、このような嫉みによって歴史が動かされた例は数えきれず、また現実に身辺に経験することも多いであろう。 嫉みは、傲慢、貪欲、邪淫、怒り、大食らい、怠惰とともに、キリスト教の世界では「七つの大罪」の一つに数えられているが、同じ大罪の中でも、個人的な利益のみを汲々として追い求める貪欲の罪に比べるならば,嫉みは個人を超えて影響を及ぼす可能性が大であるという点で、遙かに重い罪である、と言うのがこのことわざの意味である。 1. Envie passe avarice. (フランス語) (志子田光雄) |